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顔面神経麻痺の鍼灸

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顔面神経麻痺は、大きく分けると中枢性と末梢性に分けられ、鍼灸の施術を行う場合、殆どが末梢性顔面神経麻痺になります。
顔面神経麻痺を発症した場合は、殆どが耳鼻咽喉科またはペインクリニックを受診されます。
 
これまで、顔面神経麻痺については、現在の日本顔面神経学会の前身である日本顔面神経研究会が2011年に「顔面神経麻痺診療の手引き-Bell麻痺とHunt症候群-2011年版」を出しており、鍼灸については「効果が無い」となっておりました。
2023年にガイドラインが改定され、日本顔面神経学会より「顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版」がリリースされ、鍼灸については治療のフローチャートに「鍼治療」が入り、クリニカルクエスチョン(CQ)では、末梢性顔面神経麻痺に鍼治療が「弱く推奨する」と記載され、推奨度が上がりました。
これも、新潟医療福祉大学の粕谷大智先生をはじめとする先生方の、長年の努力の賜とも言えます。
 

※推奨決定 「強い推奨(行う)」>「弱い推奨(行う)」>「弱い推奨(行わない)」>「強い推奨(行わない)」

 

CQ4-2 末梢性顔面神経麻痺(Bell麻痺・Hunt症候群・外傷性麻痺)に鍼治療は有効か?
1)顔面神経麻痺(Bell麻痺・Hunt症候群・外傷性麻痺)患者への顔面神経麻痺治癒のため、急性期に鍼治療を行うことを弱く推奨する。
2)後遺症が出現した慢性期の顔面神経麻痺(Bell麻痺・Hunt症候群・外傷性麻痺)患者に対し、鍼治療を行うことを弱く推奨する。

 

 
当院は、日本顔面神経学会に所属し、学会主催の顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会認定試験に合格しております。

顔面神経麻痺とは

顔面神経麻痺と一言で言っても、神経の損傷を受ける場所によって、中枢性(核上性)顔面神経麻痺と末梢性(核下性)顔面神経麻痺に分けられます。
 
中枢性顔面神経麻痺
大脳皮質から皮質延髄路、皮質毛様体路等、脳幹部の橋にある顔面神経核までに原因があり発症する。
原因としては、脳出血やくも膜下出血等の脳血管障害や、脳腫瘍等脳実質の病変で発症。
その他に、Wallenberg症候群、Foville症候群等、顔面神経付近の他の神経麻痺を合併する中枢性顔面神経麻痺もあります。
CTやMRI等の検査も必要になり、脳血管障害に対する処置が必要になります。
顔面の下半分の表情筋は、反対側の大脳皮質支配のため、右大脳皮質を障害がある場合は左側に麻痺が発症する。
顔面の上半分の表情筋は、左右両側の大脳皮質支配のため、右に障害があっても左側の支配もあるため麻痺自体は軽度になる場合が多く、額のしわ寄せが可能。
 
末梢性顔面神経麻痺
発症原因は、単純ヘルペスウイルスⅠ型(HSV-1)や水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によるウイルス性神経炎が有力。
Bell麻痺(60% 50代がピーク)、Hunt症候群(15% 20代や50~60代に多い)、頭頚部外傷性麻痺(6%)、耳炎性麻痺(4%)、手術損傷性麻痺(3%)で、Bell麻痺とHunt症候群で約80%を占めます。
半側顔面全域で麻痺が強く、額のしわ寄せが不可。
顔面神経膝神経節に潜伏しているウイルスが再活性化し、ウイルス性神経炎を発症。
顔面神経管内でウイルスが増殖することで浮腫が起こり、神経絞扼が起こり、虚血が起こる悪循環により炎症が起こり、顔面神経麻痺を発症する。

Bell麻痺
Bell麻痺とは、イギリスで有名な解剖学者のSir Charles Bellの名前に由来します。
年間発症頻度は、人口10万人あたり20~40人で、50代が最も高い。
顔面神経麻痺以外の症状所見は伴わず、比較的良好な経過になります。
71%は完全回復し、高度な後遺症が重症は4%。
原因は、HSV-1が多い。
HSV-1は、以前に感染したヘルペス性口内炎のウイルスが顔面神経膝神経節で潜伏し、再活性し発症する。
疱疹を伴わない無疱疹性帯状疱疹(ZSV)による顔面神経麻痺は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因のHunt症候群だが、疱疹が無いため臨床的にはBell麻痺と診断される。
HSV-1が原因の麻痺より、ZSVが原因の麻痺の方が、後遺症が残りやすい。

 

Hunt症候群
Hunt症候群とは、James Ramsay Huntの名前に由来します。
年間発症頻度は、人口10万人あたり3~5人程度で、20代や50~60代に多い。
顔面神経麻痺に伴い、耳介周囲や口腔咽頭に帯状疱疹、めまい、耳鳴り、難聴、耳の痛み等の症状が組み合わさって出現するのが特徴です。
原因は、VZVが多い。
VZVは、以前に感染した水痘ウイルスが顔面神経膝神経節で潜伏し、再活性することで発症する。

 

発症した場合どうしたらよいか

まずは、急性期の場合医療機関を受診してください。
医師の診察を受け、顔面神経麻痺がどこから起こっているかを特定して頂く必要性があります。必ず、医師にご相談ください。
中枢性の場合でしたら、更に専門の医療機関での治療になります。
末梢性は、「Bell麻痺」か「Hunt症候群」が約80%占めており、第一選択としてステロイドや抗ウイルス薬の投与が必要になります。
初期の段階は、ウイルスの増殖により炎症が起きているため、炎症を抑えるステロイド、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬が必要になります。
これは、顔面神経管という狭い管内で炎症が起こり神経絞扼・浮腫・虚血により顔面神経麻痺が発症しますので、早急にそういった状況を改善するために投与することが重要になってきます。

末梢性顔面神経麻痺治療の考え方


ステロイドや抗ウイルス薬投与の標準治療は必要
麻痺の病態と病期の理解は必要
病期に応じたリハビリやセルフケアの指導は必要
麻痺の早期回復促進よりも、いかに病的共同運動や拘縮等の後遺症を予防・軽減するかが重要

当院での末梢性顔面神経麻痺施術

医療機関での投薬と併用で施術を行っていきます。
これは、早期回復を目標とはせず、いかに後遺症を予防・軽減するかを目標に丁寧に施術を行っていきます。
現状を把握し、重症度や予後予測をする柳原法と、重症度や後遺症評価をするSunnybrook法を採用しており、施術の経過を把握するため月1回の評価を行います。
 
柳原法

医療機関でのENoG(Electroneurography)検査を行っていましたら、その結果も評価の参考に入れております。
ガイドラインに沿ったセルフケアも実際に行い指導して、出来る限り迷入再生による病的共同運動や顔面拘縮の予防・軽減を目指します。

当院では、直線偏光近赤外線治療器(スーパーライザーPX Type2)を導入しております。
全身の血流促進を促すため、星状神経節近傍照射の併用をお勧めします。